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>Flareさんとの解釈の違いも、自分の考えを客観的に見直すことができてとても有意義だと思っています。
私も人によって色々な解釈があるんだなぁと非常に勉強になりました。
>引用されたくだり、加藤氏は「現時点で私が理解する、坂井三郎の左捻り込みとは、次のようなものである。」という書き出しで始まっています。しかるに、相手が登場するのは、左捻り込みの導入部分と、背面直前の右ペダルには「相手に飛行方向を錯覚させる意味も含まれている」、背面後の降下に入った部分で「相手の斜め宙返りの軌道の上側に出る。」というわずかな部分だけです。そのほかは、まるで相手の存在を無視するがごとく、最後まで取り上げていません。捻り込みの技としての最終局面、完結した状態もまったく書いていない。
これは、「零戦の秘術」に関してのみ言えば、相手は単純に斜め宙返りをしている事を前提にしてますし、坂井さんもその前提でお話されていますから詳しい説明は必要なしと考えたのではと思っています。(加藤氏と坂井さんの対話で十分補足されています)
もし、相手が違う動きをした場合、そのすべてのパターンを書かなければならないと加藤氏も書いてますし、読んでいるほうも色々なパターンで説明されるとそのたびに相手に合わせて変化するタイミングなどを解説するのは困難と判断し、坂井さんにも、「相手が単純な斜め宙返りをする前提で説明してください」と頼んだのではないかと推測しています。(あるいは坂井さんからそう言われたのかもしれませんね)
そのような前提ならポイントごとに機体の動きと操作を比較的明確に説明する事ができます。
本文中でも、捻り込みの技としてのポイントごとの操作と相手との相対関係、最終局面から完結した状態がちゃんと書かれていると思います。
ちょっと長いですが、その部分を抜粋してみます。
※[]内は私の解釈です
「零戦の秘術 216ページより抜粋ここから」
坂井氏-こう行って[斜め宙返りに入って]、間もなく向こうの水平線が見える頃に、右足をひょいと踏んでやる。そうすると非常に舵が効くスピードですから、グッと(機種を)向けてくれる。[グッと右斜め上に機種が向く]
そこでそうなり始めたら、すかさず今度は左を踏んで、右足で踏んだのを消す。
そのまま正しい降下に移ればいい。
そうすると、ここで[右から左に踏み買えた時]向き[軸線]が変わってますから、相手は向こうへ(左前方)行っている。
向こうへ行ってくれれば、このままでいいんですが。
加藤氏- 相手がいま向こうとおっしゃられましたが・・・・・。
坂井氏-相手は正しい斜め宙返りをやっているわけでしょう。
そうすると、相手がこう行ってくれる。
こっちはこうつきながら、ここでグイと捻るわけですから、相手から言えば、あっち[坂井機の左前方]へいっちゃう。
これがつける[相手の後方につける]要素なんです。
ここまで-------------------------------------------
このように、hanzoさんが指摘された相手との位置関係は、あくまで左斜め宙返りをしているという前提で坂井さんも加藤さんも書かれていますので、この本ではそれ以外の時にどうなっているかは、加藤氏と坂井さんとの対話に見る事ができます。
また、坂井さん自身も、「相手が斜め宙返りに乗ってこなかった時、これをやると自分は撃たれてしまいますから」とか、「実戦では使用した事はありませんでした」というような事を書かれていた記憶がありますから、多分訓練課程での個人技という事であって、実戦技としては、頂点付近でスピードが落ちるのを見計らって射撃されたりするかもしれないし、不確定要素が多い実戦ではその通り使ってなかったのかなと推測してます。
>相手はドローンでもあるまいし、どうして坂井機を撃とうとしないのか、どうして意図に反してオーバーシュートするのか、左捻り込みの本質、最大のハイライトを書かずしてどうする!と突っ込みたいです。
上にも書きましたが、左捻りこみの一連の動作はあくまで相手が正しい左斜め宙返りをした時を前提としている事を念頭において検証されています。
その上であえてhanzoさんの問いに答えるなら、私が今で読んだり見たりした経験と、加藤氏の理論と坂井さんの発言を元に私が出した答えと理由は以下です。
>どうして坂井機を撃とうとしないのか。
撃ちたくても打てなかったか、撃つ意思を持たなかったと理解しています。
<理由>
1.加藤氏の理論では照準に入る直前で坂井機の軸線が急激に変化し、照準タイミングを逸する。(うまいやつなら撃てると坂井氏は言ってますが)
2.自分の命がかかっている実戦で、相手が自分の知らない機動をした時、特に頂上付近での背面によるカンの狂いや、右足の踏み込みによる引っ掛けも鉄だって射撃タイミングを逸する。(当時のパイロットとしてはくにを問わず携行弾数に制限がありますから、無駄弾は命に関わります。
新米パイロットや見せ弾等を除くと、確実に撃てると判断した場合以外は射撃しない場合が殆どだと思います。(バーチャルパイロットなら別ですが)
>どうして意図に反してオーバーシュートするのか
これは頂点付近で相手との軸線を急激に変え、強力な誘導抗力によって急減速するからと書いてあります。
実際にIL2で飛んでみましたが、その通りになります。
(注 AHでは誘導抵抗が正確に再現されてないので、加藤氏の理論によるオーバーシュートはできません。左捻りこみはエンジンはほぼ全開のまま減速しませんから、機首を右に振ってから左ペダルを踏む事による慣性効果も、胴体や翼の空気剥離効果、軸線から機種が振れた時に生じる左右の翼端の速度差による誘導抵抗の影響、進行方向に対する胴体の投影面積増加に伴う抵抗や、機体を縦にする事による翼の誘導抵抗も全く実装されて無いため、まずあのような機動自体困難ですし、もしやれたとしても、ピタリと後ろにつかれたまま距離も縮まり、格好のエサになります)
>左捻り込みの本質、最大のハイライト
本質は頂点付近の最適制御と軸線変化操作に伴う誘導抵抗増大による急減速でのオーバーシュート。
最大のハイライトは、零戦ならではの性能による急減速からの相手の右前方に位置し、相手にとって非常に不利な状況に陥るところだと思っています。
F6Fとかでこれをやると、急減速まではできるんですが、その後が続きません。
味噌をする時点で錐揉みに入ります。
>もし、加藤氏が、左捻り込みが相手のオーバーシュートを狙ったものであるという認識を持っているならば、この部分を書かないということは、まったく理解に苦しみます。
加藤氏は、オーバーシュートの理解を助けるものとして、事前に最適制御理論と、パンパン制御などの説明をされていますので、十分に理解しているものだと思います。でなれけばあのような理論の説明は全く不必要です。
>そういった意味で、「オーバーシュートを狙ったものというふうに加藤氏が解釈しているとは読めない」と書きました。
hanzoさんの解釈に対する私なりの解釈を上に書いてみました。
いかかがだったでしょうか。
文章の構成能力が著しく無い私の文章はわかりにくいかもしれませんが、そのへんはご容赦ください。
>しかし、バレルロールとは言い難いです。それは、なぜ、斜め宙返りではなくて左捻り込みはバレルロールと考えるかを説明する過程で、明らかにします。
そうですよね。
加藤氏の理論は氏なりの理論であって、今の所この理論に対する明確な理論は存在してません。
この議論では加藤氏に対する新しい理論(Hanzo理論と呼びましょうか・・)で捻りこみの本質にせまる事が本題ですから、ぜひよろしくお願いします。
>くどくて申し訳ないですが、ぼくは、加藤氏の説は、甚だ不完全、ずばりいえばマチガイだと思ってます。不完全だけならいいのですが、大学の先生が書いたものだから影響が大きい。残念ですが、世間的には今後も、加藤説が坂井さんの左捻り込みということになるでしょう。
>坂井さんは加藤説を「80%以下」と口にしてますが、敢えて言いますが、坂井さんの社会人としての節度がそう言わせたのであって、ぼくの感覚だと、0点に近いと言ってるようなものだと思います。
今の所加藤氏の説が間違いだったとしても、加藤氏は加藤氏なりの明確な理論と根拠があります。
ですから、hanzoさんの理論を正しく把握し、それが検証できれば、「これが正しい坂井氏の左捻りこみだ!」と言えると思いますし、とても素晴らしい事だと思います。
ですので、今後は加藤氏の理論と対比して考えるのではなく、hanzoさんの理論をお聞かせ下さい。私はその検証をもてる限りの知識と技術を使って検証していきたいと思っています。
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