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なかなか興味深いお話をありがとうございます。
ただ、今は色々忙しくて正しい根拠に基づいたレスを書く事ができませんので、しばらくお待ちください。
また、話だけではなく、実際にイメージしたものを飛んでみて比較するという検証も必要だと思いますので、時間がとれればそのイメージも作って生きたいと思います。
>坂井さんが、左斜め宙返りというとき、上下運動の大きな螺旋運動、すなわちバレルロールのことを説明しているという可能性について、前レスに続いて、根拠となるものを挙げて見ます。
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>■旋転という言葉の意味
>坂井さんは、先に採り上げているインタビュー映像の発言や、「零戦の運命」では、左捻り込みの説明に「旋転」という表現を使っておられます。「3旋転から4旋転で確実に・・・」という具合です。
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>一般に、旋転と旋回にそれほどの違いがあるとは言えませんが、坂井さんの用いる「旋転」は、やや異なる趣があるのではないかと思っています。
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>坂井さんの上司でもあり、横空や空技廠で空戦技術の研究を行われた柴田武雄さんは、「旋転戦法」なるものを開発し提唱されています。旋転戦法は、結局のところ海軍航空隊の採りいれるところとはならなかったようで、細部は良くわからないのですが、柴田さんへのインタビューを再構成された作家の碇義郎さんの書かれたものによると、スナップロールを利用し、相手をオーバーシュートさせる戦術のようです。スナップロールは、失速を利用する操作ですが、飛行機の動きはロール軸を360度回転させるものですので、同時代の海軍の方が使う「旋転」は、ロール系の機動を指すものであることがわかります。
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>旋転は、砲術でライフリングされた砲身から飛び出す弾丸の運動の説明に用いられますので、海軍ではお馴染みの言葉でしょう。
>弾丸の動きは、進行方向を軸に回転しながら進むというものですから、旋転という言葉のイメージは、飛行機でいうとエルロンロールにあたるものであり、やはり、ロール系の機動を表現する言葉であると言えます。
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>以上から、ロール軸の変化の少ない機動(斜め宙返り)に旋転という言葉を充てるだろうかという疑問が生じます。一方、バレルロールを旋転と表現することには何の違和感も感じません。左捻り込みの説明に、頻繁に旋転という言葉を使っていることが、少なくともバレルロールに近い機動であったことの、根拠となるように考えます。
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>■坂井さん自身の表現
>『エース・サカイの零戦操縦法〜特殊飛行のテクニックあれこれの巻「軍用機メカシリーズ「零戦」P131」』のなかの一節
>「空中戦の格闘戦で私たちが活用した「ひねりこみ」の技は、宙返りと緩横転と一部に垂直旋回の技を加味した格闘技で、この技によって半径を極端に小さくしたタテの運動に相手を誘いこむのであるが、このひねりこみの技は、ベテランパイロット一人ひとりに個性があり、その秘技は口述などで伝えることはほとんどできなかった。空中戦における零戦のずばぬけた強さは、水平面よりタテの運動に強い特長に、さらにパイロットが工夫をこらした結果であった。」
>(この本の元は1977年に潮書房より出版された丸メカニックシリーズだと思いますが原本は未入手です)
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>ここでは、「宙返りと緩横転と一部に垂直旋回の技を加味した格闘技」と他に見られない表現をされています。
>これまで挙げた根拠となるものやこの一節をみると、左捻り込みは、左斜め宙返りではなくて、左バレルロールに近い形と考えて差し支えないと思えます。
>ただ、航空力学の専門家である加藤さんが、坂井さんへのロングインタビューを土台にして著した「零戦の秘術」や、他ならぬ坂井さんの手による「零戦の運命」では、左捻り込みは左バレルロールであると読むことはできません。
>したがって、自分としては、どうしてそのような矛盾というか齟齬が生じているのかを、解明したい、謎に迫りたいと思っています。
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